企業・団体 活用事例

 テクノロジーが社会と密接に関わる「Society5.0」やグローバル化など、世の中の変化のスピードが一段と速くなりました。今までの常識は数年後には通用しなくなると言っても過言ではありません。自分の専門外のことも含め、広い視野や関心を持ち多様な可能性を探していくことがますます必要になります。

 ニュースをはじめとした日々の動きを主体的に情報収集して、それぞれの知識を結び付けて学び続ける姿勢がなければ、人生100年時代を「成長しながら」歩んでいくことはできません。

 ニュース検定は、社会の変化や動向だけでなく、自分自身の興味・関心に気づくことができるのもメリット。そこからさらに学びを深めていけば、おのずとキャリアデザインができるでしょう。

 社員が社会に対する関心を失わないようにするにはどうすればよいか。さらに仕事にも役立つ知識や考え方を身につけさせるには何をすればよいのか――。コンサルティング会社「エフアンドエム」(大阪府)は、ニュース時事能力検定試験を社員教育の一環として積極的に活用し、社会や世界の動向に関心を向けさせることに成功している。その活用法や社員の実感、人事部門の見方を聞いた。

 「以前は別の企業向け試験を導入していたんです。でも、それは資格試験ではなかったこともあり、試験対策としてのテキストが無く、その分勉強する範囲が広いため何を頼りに勉強を積み上げればよいか社員は戸惑っていたようです。そのため、もともと世の中や経済に対する興味関心が強い人が良い点数を取っていた。それでは『教育』にならないんです」。同社の森中一郎社長はそう説明する。エフアンドエムは、全社員にニュース検定2級の取得を義務づけている。3年の間に3級、準2級、2級と段階を踏んで合格させる設計だ。6年前から社員教育に取り入れており、上々の効果を生み出している。

 「ニュース時事能力検定の良い点は、勉強範囲が明確なテキストがあること。これで基礎をおさらいし、検定に挑む。合格すればモチベーションが確実に上がります」。

ニュース時事能力検定を仕事に生かしているエフアンドエムの社員。「社会への関心を高めるツールとして最適です」と笑顔で話してくれた。

 さらに同社は、自社で開発したeラーニングの仕組みで、社員のスマートフォンに毎日1問、ニュース検定の問題を配信。通勤時間などを使って1~2分で回答できるため、こつこつと積み重ねる習慣も身につくという。

 入社3年目の足立昴也さん(24)は「テキストでの勉強とともにスマホで検定への意識付けができるのでとても有り難い」と話す。検定合格はもとより、仕事に直結することがやりがいにつながるという。「生命保険会社への営業を担当していますが、お客様同士の話にしっかり入っていくことができます」。どういうことか。「仕事以前の雑談です。もちろんスポーツや砕けた話もありますが、米中の貿易摩擦や国内政治など、間接的に仕事に関する雑談をされていることがあります。そこに入って、自らの考えを述べる。『こいつは時事的な話もできる』と認めてもらえるんです」。取引先の営業マンの知識や力量を、そんな雑談で見ているのだ。「ニュースや時事問題なんて学生時代には関心がなかった。自分の生活には関係がないとも思っていましたが、仕事をするようになると断然『武器』になる」。

 同じく入社3年目の左藤唯さん(24)は、為替相場の動向や日銀の金融緩和政策の見方といった「今の社会情勢」について話す営業先の責任者の思考を理解できるようになったという。「黙っていては相手にも伝わらない。自らの知識や考え方を話すことで、より自分を理解してもらえ、営業機会を作り出すことにつながっていると実感しています」。

 一方、入社2年目の石井大さん(23)は営業先でのプレゼンテーションに役立っていると話す。「時事的な知識があることでプレゼン内容も深まり、勉強会に参加いただいている皆さんに認めてもらえて仲良くもなれる」。営業先に一目置かれる存在になることで、仕事に対するモチベーションが大きく高まるのだ。

 人事担当者はどう見ているのか。人事経営企画部の松尾麻希部長は「学ぶ姿勢を癖づけることができている」と感じている。「検定に合格することを義務付けること、その一助として毎日問題を配信し勉強することを半ば『強制』することで、こつこつ学ぶことを生活の中に定着させる。今の若い人にはそうしたほうが良い、効果があると見ています」。

 しかも、自社の社員の品質を保証できるともいう。「担当する仕事の知識があるのは当然。さらに社会に対する関心がある、ということが会社全体の信用を高めていると思います」。

 仕事に上乗せされる形で、検定を受けることに社員の不満はないのか。「確かに忙しい時は『大変だなあ』とは感じます。でも、それを超えて、仕事に結びつくことを思えば苦にはならないです」。

 検定試験前には、営業部で集まり過去問題に取り組むなど対策もするという。スマホへの配信など、若い社員が取り組みやすく工夫をしている点も大きいが、森中社長は「時事問題などの教養は新人のころから鍛えるべきで、社員の話にもあったように仕事に直接役立つことをもっと認識したほうが良いと思います。検定も合格すればより意欲も高まります。ニュース検定はこれからも活用していくつもりです」。